研究室配属について (2020/07/18)

 本研究室(内部観測研究室)では、2020年7月18日(土) に説明会を行い、 RD3年生の研究室配属を受け入れます。自然知能(人間や動物の賢さと愚かさを理解する)と人工知能(自律的に行動するシステムを作る)の研究室です。知能の原理の理解と実現に興味があります。

 高橋は2018年4月から2019年3月まで、ドワンゴ人工知能研究所の協力研究員として(11月から半年弱はHRマネジャーとしても)、共同研究を行ないました。現在は、2019年6月から2020年3月までは東大で、現在は理化学研究所 革新知能統合研究センター (AIP) で共同研究を行っています。共同研究のテーマには現在のところ、拡張ベイズ推論、ネットワーク分析(コミュニティ検出)、AI導入の心理的障壁・信頼の問題(人間から自動システムへの権限の委譲にどのような心理的・社会的障壁があるか)、パーソナルAIエージェントの開発、自動運転の法的問題、などがあります。

こちらの情報とHPの内容は、研究室説明会当日まで更新 していく可能性がありますので、配属を考えている学生はこまめにチェックしてもらえると助かります。

7/18(土) の研究室説明会はコロナのため変則的で、3回のみ行う予定でいますが、その時間帯に都合の悪い学生については個別に対応しますので、ご連絡ください。

tatsujit@mail.dendai.ac.jp  (高橋達二メール)

また、7/6(土) の午後は研究室に来てもらえれば、現役の学生と話ができます。Zoomリンクについては moodle に示してありますが、SpatialChatサービスの利用も考えています。現役の学生とやりとりできるように、と考えています。その他、質問は 7/19 までこちらで受け付けます。匿名でも可、スマホでも質問などできます。気軽に尋ねてください

 

卒業研究の配属に際しては、 人間や動物の賢さや愚かさ についてもっと科学的に知りたい人や、その知見を活かしつつ 人工知能の研究・開発 を行いたい人を募集します。研究テーマについては以下の二つがメインとなります。

  1. 自然知能 、つまり人間や動物の認知(賢さと愚かさ)の研究
  2. 人工知能・機械学習 とくに新しい 強化学習 エージェントの研究と開発

研究テーマについて詳しくは下で説明します。

普段から頭を使うのが好き、大学院(修士・博士)進学を考えている、卒業後に研究開発系の進路を希望している、新しい技術の習得が苦でない、といった学生さんが、これまでの経験から言っても、この研究室に合っていると思います。

説明会では、教員の高橋達二の他、現役メンバー(博士課程3年生が1名、博士課程1年生が1名、修士課程2年生が6名、修士課程1年生が4名、学部4年生が14名)のうち何人かがお待ちしています。

研究の目標と方法

  • 「人間並み」の人工知能を作りつつ、「人間(並み)」についての理解を深める
  • 次のような知能を 理解し(理学)作る(工学)
    • 世界の模型を自分で頭の中に作りながら (因果関係を推論する)
    • 試行錯誤を通じて (自分で探索を行う)
    • 連続的な世界から離散的な記号を作りながら (言語の起源)
    • 一を聞いて十を知り(スモールデータからの学習)
    • 世界の中で適切に行動する
  • そのために、
    • 既存の分野における問題を一つ一つ解きながら
    • そのような知能の例である、人間や動物の巧みなやり方に学びつつ
    • モデリング、シミュレーション、理論、実験などの方法を用いる

研究室の教育研究方針

  • 勉強会などで基礎を大事にしつつ、新しいテーマの研究で実地で学んでいく
  • 機械学習や人工知能、数学を参考にしつつ「人間」や「知能」の理解を深める
    • 一過性の人工知能ブームで終わらず、人間と社会の理解を深める
  • これらを通じて、研究室メンバーが生き残る
    • できるだけ 嫌なこと、余計なことをしないでダラダラ楽しく 生きていく準備
  • これまでの進路

メイン研究テーマ1:人工知能・機械学習 とくに強化学習エージェントの研究と開発

自分で試行錯誤を通じて、なすべき行動系列を獲得する強化学習は、現状の人工知能の中心となる機械学習の分野でも、囲碁 (AlphaGo) やデジタルゲーム (DQN)、ロボット制御などでの成功から注目を集めている分野です。

大量のデータ (入出力の例) を与えられて、その間を埋める (入力から出力を生む関数を作る) のが教師有りの機械学習で、これは自動プログラミングの一種です。それに対して教師のいない強化学習では、データを自分で探しながら、一番良いデータの探し方と受け取り方を獲得していきます。

本研究室では、強化学習においてこれまでずっと問題となってきた、様々な行動を試すこと (探索) のコストを考慮し、また学習のゴールの設定についても人間や動物の直感 (因果関係の感じ方)、やり方 (満足化や、他人の情報の社会的な活用) を参考にし、アルゴリズムとして定式化するなどを行ってきています。

その他にも、人間や動物に学びつつ、世界のモデルを頭の中に作ったり(因果推論)、少数の試行錯誤で適切な行動を獲得したり(強化学習)、一を聞いて十を知ったり(汎化)、全てについて考え込まず、ルーチンワークについては習慣を形成してそれで済ませ(習慣学習)、大事なことに脳のリソースを振り分ける(計算論的合理性)、といった「機能」を実現していきます。

メイン研究テーマ2:自然知能、つまり人間や動物の認知(賢さと愚かさ)の研究

とくに、人間や動物がどのように行動を決めるか (意志決定) とどのように世界や他者を理解していくか (因果推論) にフォーカスします。

特に本研究室の国際的な特色として、 条件文否定 などの研究を、行動・認知・オンライン実験だけでなく、理論やシミュレーションも用いて行っています。

「もし明日雨なら電車で名古屋には行かない」のような条件文は、抽象的なルール、社会的な規則、因果関係の表現だけでなく、約束や交渉にも必須の、重要な言語の要素です。また、否定、上の例では、「電車で行かない」のか「名古屋に行かない」のかは、背景やイントネーションを含めた「文脈」に依存します。 Siri などの現在の人工知能も、条件文と否定が適切に扱えたらいいと思いませんか? 条件文と文脈・否定の研究はAIに関しても非常に重要な基礎研究です。

他にも、人工知能の開発や理解に役立つようなトピックで心や脳の研究を行います。

身につくスキル

上の二つ、あるいは他の研究テーマを研究室で扱うことで、以下のようなスキルは身につくと思います。

  • プレゼン
    • 場数を踏む
    • 勉強会でTA(バイトとして)として下級生に教えるなどもお願いしたいので、教えるのも上手になるはずです
  • 論文読み書き
    • 新しい技術を学ぶ
    • 人に伝える(技術文書の執筆)
  • オーガナイズ
    • 人を巻き込んで物事を始めて、続けて、何かを達成する
    • ビジネスは大体これかと思います
  • 機械学習プログラミング
    • Python プログラミング
    • データ分析・統計処理
    • システム構築
  • 基礎的な数学、統計学など
  • インフラ
    • サーバーの構築、仕様
    • GPU計算
  • 英語と国際経験
    • 英語は必須とはしませんが、大事です
    • 国際会議などの参加は推奨します
    • 高橋の家族や研究仲間などを含めて、国際経験のチャンスは多く提供できます

大学院進学に関する経済的な状況

せっかく理工系の学生なのに学部卒で就職というのは惜しいと思います。学部卒だと、3年後期から卒業まで18ヶ月しかなく、就職活動を抜けば12ヶ月くらいしか研究室で過ごせないかもしれません。しかし今後、AI、というよりも数百年続いているオートメーションの流れを考えた上で、この後数十年の間コンピュータに奪われない仕事に就くためには、大学院で研究と活動の仕方を身につけるのが一つのやり方だと思います。

まず、大学院の場合、無利子の奨学金が 借り られます。修士の場合月5万または8.8万、博士の場合月8万または12.2万になります。また、修士の場合は、在学中の2年間に研究活動をアクティブに行えば、半額または全額の返還免除が受けられます。高橋研の修士の希望者は、大体が全額か半額で返還免除になってきていますが、学生が最低限頑張れば、今後その割合は上げられると思います。経済面としては、次のバイトの項目も見てみてください。

また、博士進学の場合は、大学の奨学金があり、結果として 学費が半額近くに減免される 他、上記の奨学金の他、研究を長く行っている分インターンシップやアルバイトも紹介しやすいです。更に、「日本学術振興会」という研究費の配分などを行う独立行政法人の制度で、 特別研究員 というものがあります。これは、給料と研究費をもらいながら研究に専念できる制度です。本研究室では、博士の2名が申請して、1名が獲得していました。修士の頃から準備をすれば、研究員になるのは十分可能ですし、この申請に落ちても可能な限り研究室内外での援助は行います。研究室の活力は大学院生、特に博士課程の学生の活力に依存するところも大きいのです。

他に、政府や大学は留学を奨励・補助しているので、海外の大学や研究所に滞在して、生活費も出してもらう、という手もあります。高橋の共同研究者はヨーロッパやアメリカにもいますし、研究テーマに応じて研究ネットワークを広げ、滞在先の候補を増やすくらいの努力はします。

バイトの紹介について

研究室配属後はできるだけ研究室内の勉強会や研究自体に専念してもらいたいと思います。なので、生活のためバイトが必要な場合は、外部での研究と無関係なバイトよりも、研究開発関係のバイトをしてほしいなと思っています。現在高橋研では大きめの予算を2017年4月から2020年3月までの期間で取っているので、それに関わる作業を特にしてくれる場合は、アルバイトとして雇用できます。

これまでに、高橋研では以下のようなアルバイトやインターンを紹介してきました。今後紹介できる可能性が高いものも含めて、次のようなものがあります:

  1. 研究室内部での研究補助バイト
    • 研究費があり、そのプロジェクトに沿ったスキルのある場合
  2. ネクストリーマー 社 インターン(成増)
    • 対話システム、自然言語処理の研究開発
  3. ホンダ・リサーチ・インスティチュート(HRI) (和光市)
    • 自然言語処理、バーチャルリアリティ、自動車の自動運転、に関連するテーマでの研究・開発
  4. DeNA 社での人工知能・強化学習システムの開発 (渋谷)
    • ゲームAIの研究開発など
  5. 防衛医科大学校 (所沢)
    • 行動・電気生理実験の補助とデータ解析、プログラミングと数理モデリングの実施
  6. 理化学研究所 (和光市)
    • SR (代替現実) のソフトウェアの開発と研究
  7. 国立障害者リハビリテーションセンター (所沢)
    • 技術補助員として、プログラミングやデータ分析を担当
  8. 学習院大学 計算機センター (目白)
    • 計算機センターにおいてキャンパス内の情報処理機器のサポート
  9. 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 (八王子)
    • 副手 (TA) としてプログラミングの教育を担当
  10. 青山学院大学 理工学部 (相模原)
    • 非常勤助手としてプログラミングの教育を担当

学外との共同研究

  • DeNA
    • 強化学習システム開発、ゲームAI開発
  • 防衛医学大学校
    • 行動実験補助、強化学習アルゴリズム開発、シミュレーション
  • 日本大学
    • ロボットの運動制御、実機とシミュレーションで
  • 早稲田大学、長浜バイオ大学
    • 圏論を用いた比喩理解の計算理論
  • イギリス・ロンドン大学
    • 因果関係の推論、否定、「議論」
  • フランス・パリ大学 & イギリス・ダーラム大学:
    • 条件文
  • その他、ドイツ、スイス、アメリカの大学や研究所などとの共同研究の可能性あり

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